プエルトナタレスにて

2010年2月25日


プンタアレナスからバスでプエルトナタレスへ。(【BUS SUR】料金4000チリペソ)
バスターミナルにはホテルの客引き多数。
「ひとり5000ペソでwifiもあるよ~」と
調子のいいおばちゃんの言うがまま連れてこられた宿は
中心地からだいぶ離れたボロい宿だった。しかもwifiもないという。
宿は信用第一。ちょっとの嘘でも気分が悪いので当然、断った。

そして最初から決めていた宿「HOSPEDAJE ESTRELLITA」へ。

宿主のルーベンは寡黙だが人が良く、親切でキレイ好き。
一年前に最愛の妻を亡くした後、孫や甥っ子と一緒に宿の管理をしている。
妻を亡くす前のルーベンの写真を見せてもらったが、別人かと思うほど太っていた。
よほどショックだったのだろう。この一年で激ヤセしてしまったらしい。
時折見せる表情が哀愁漂いすぎて切なくなるが
一生懸命仕事してる姿に胸を打たれる。
妻との思い出がいっぱい詰まったこの宿を大事に守ることが
今のルーベンを支えているのかもしれない。

そんなルーベンの宿「HOSPEDAJE ESTRELLITA」は
日本人旅行者も多く利用しており
ルーベン自身も日本の旅行者に広く知ってもらうにはどうすればよいかと
試行錯誤していたので([地球の歩き方」に掲載されるにはどうすれいいか?と質問された・笑)日本人旅行者向けのチラシを作ったらとても喜んでくれた。
このチラシが、あらゆる日本人宿の情報ノートに貼られたりすれば、
もっと客は増えるはずだ。がんばれ!ルーベン!!!



さて、これから我々は『パイネ国立公園』の大自然をキャンプしながら
10日間かけてメインコース(128㎞)歩いて一周するのであります。
プエルトナタレスでは、その準備も兼ねてたっぷり買い物した。


なんせ10日分の食料だからね。
どうなることやら・・・


【プエルトナタレスのおすすめ安宿】
『HOSPEDAJE ESTRELLITA』
住所chorrillos855-PuertoNatales-Chile
電話413727-415548
★宿代/5000チリペソ(朝食付き)
★インターネット可(有料)※近所にフリーwifiのネットカフェあり
★キッチン・HOTシャワー
★日本語情報ノートあり
★パイネ国立公園までの送迎バスの手配

 パイネ国立公園(その1)



パタゴニアの大自然をそのまま残したパイネ国立公園の
メインコース128㎞をキャンプしながら10日間かけて歩くことにした。

園内にはいくつかのキャンプ場(有料・無料含む)があるが、
キャンプ地以外での宿泊・焚き火は厳禁である。
したがってトレッキングする者は、どれだけしんどくても
次のキャンプ場を目指しながら歩かなければならなくなる。
キャンプ場には売店もあるにはあるが、通常の3倍ほどの値段で売られていて
おのずと貧乏旅行者は大量の食料を持ち歩かなくてはならない。

普段からほとんど運動しない我々が、
何故こんな苛酷なトレッキングに挑んでしまったのか・・・
正直言って、甘く考えてました(笑)。


そんなわけで初日(2010・2・26)


10日分の食料やキャンプ用具を詰め込んだ重たいザックを背負って
意気揚々とスタートした。最初の目的地は「セロン」。距離は10㎞。
「まぁ、大丈夫だろう」と雄大な景色を楽しみながら歩く。




しかし、歩いても歩いてもセロンの「セ」の字も見えてこない。
おまけに照りつける陽射しに体力を奪われ、持参した飲料も残りわずか。
重たい荷物が肩にめり込み、足も痛いし腰も痛い。

スタートから7時間後の17:30。ようやくセロンに到着。

すでに体はボロボロのバキバキ。
しかもキャンプ場「セロン」は有料のくせにHOTシャワーも出ない、
便所も汚い、蚊が多いなど、最悪。
そして明日は今日よりもずっと長い距離19㎞を歩かなければならない。
すでに弱音を吐きまくり、不安と後悔のなかパスタ作って寝た。



2日目。
昨日の反省を活かし、飲料を3リットル持参。
朝8:40出発。いきなり急な山道。すでにふくらはぎはパンパン。
ようやく頂上に着くと、次は体ごと飛ばされそうな暴風に襲われる。
あまりの強風で奥さんが2回転倒。すぐ横は崖である。危ね~。


ひたすら歩く。とにかく歩く。覚悟はしていたが19㎞はやっぱりキツイ。
しかも道を教えてくれる目印がいい加減すぎるし、少なすぎる。
おかげで途中、道を間違えて湿地帯に入り込んでしまい、沼にズブズブ。
泥だらけになりながらようやく元のコースに戻った。

途方に暮れながら歩くこと10時間。ようやくキャンプ場「Dickson」に到着。
ここは一応HOTシャワーが出るが、とにかく蚊が多い。
まさかパイネに蚊が多いなんて思ってなかったから
虫除けを持って来なかったことをひどく後悔する。
そして何故かパイネの蚊はデコの生え際ばかり襲ってくるので、
生え際がボコボコにふくれた。
大の蚊嫌いの奥さんは、100匹近い蚊の大群に襲われ発狂寸前だった。

それにしても19㎞歩けた。全身筋肉痛だが、やればできるもんだ。


 パイネ国立公園(その2)

3日目。
今日は比較的に楽な一日。とはいっても9㎞。それなりにしんどい。
しかし、身体は確実にパイネの山道に順応してきているようだ。
初日ほどの疲れもなく、休憩する回数も減ってきている。

そして、この日のクライマックス。
石だらけの丘をひたすら登ると、突然目の前に広がるロス・ぺロス氷河!!


まったくニクイ演出である。


浮かれた外人が氷河のかけらを素手で拾ってきた。アホだな~。
ロス・ぺロス氷河からちょっと歩いたらキャンプ地「los perros」に到着。
所要時間6時間30分。
明日は最も苛酷といわれる「峠越え」だ。


4日目。
AM7:50 最大の難関「峠越え」に備えて早めの出発。
森の中を1時間ほど歩くと石だらけの山が出現。


通称「アンデスデザート(アンデスの砂漠)」。
最大の難所の正体はこれだったのか・・・
石の丘を越えても、越えても、次なる丘が・・・
どこまでもつづく灰色の世界。その光景はまさに地獄。
一つ積んでは母のためぇ~♪と人間椅子の『賽の河原』を口ずさみながら
ひたすら続く石の砂漠を登ること3時間。
ようやく頂上・・・・

お・・・!?


おおおおー!!!!!

地獄から一転!!目の前には大氷河のパノラマだ!!!
一瞬で疲れを忘れるような絶景!!
これは峠を越えた者だけに与えられる粋なご褒美だ。

頂上に立てられた目印の棒には様々な想いを込めた
靴下や写真やパンツ(?)が結び付けられていた。
誰かが勝手にやり出したことなのだろうが、
何らかの願を掛けたくなるほど神がかり的な光景なのである。
我々も友人の快気を祈って。。
ぶっとい太文字で「よしえは治る」と書いた旗を巻きつけてきました。


絶景を堪能した後、我々を待っていたのは延々と続く「下り」。
しかも急勾配&悪路。


簡単そうにおもう下り坂だが、重たい荷物と全体重を足だけで踏ん張るので
膝や足首にかなり負担がかかってくる。
しかも4時間も下りっぱなし。
後半は「膝が笑う」どころじゃない。「膝が大爆笑」していた。
身体を支える足に力が入らず二人とも尻もちついたり、足首グネったり。
ガタガタのボロボロで、キャンプ場「paso」に到着。


奥さんの痛々しい足がこの峠越えの激しさを物語っていた。



そんな疲れた身体には練乳が一番!
究極の甘さ、それは練乳。
7UPのペットボトルに詰めた練乳を一口飲んで、至福のひと時。
これは数年前、夫婦でお店(ポーポー軒)やってた頃、深夜まで仕事して疲れた時に
むちゃくちゃ甘いものが欲しくてなってチューブ入りの練乳を舐めだしたら
止まらなくなって2人で半分以上一気に食べた経験から学んだもの。
原液のミルキーをドロドロ飲んでる感じ。喉が焼けるほど甘いぜ!

 パイネ国立公園(その3)

5日目。
疲れは溜まってるはずなのに身体が妙に快調だ!
10:10「paso」出発。
6㎞歩いて13:20「guardas」到着。
人糞らしきものが落ちてるジメジメした雰囲気のキャンプ場だったため
予定を変更して次の目的地「Grey」まで、何故か2人とも小走りで向かう。
異常に速いペースで4㎞の道のりを55分で来てしまった。
「Grey」はグレイ氷河のすぐ側にあるキャンプ場だ。



目の前の湖には崩れ落ちた氷河のかたまりがプカプカ浮いている。
ここはいいね。楽園みたいだ。


グレイ氷河が見渡せる展望台も素晴らしい。


夕飯はラーメン&リゾットの2品で、ちょっとした贅沢。
氷河を眺めながらピリ辛ラーメンを食べる。



6日目。
いよいよ、今日は氷河トレッキングだ。
ここ「Grey」は氷河トレッキング(一人70,000チリペソ))が
直接申し込める事務所がある。

朝9時出発。


こんなお恥ずかしい格好もなんのその!
小型ボートでグレイ氷河へ。



簡単なレクチャーを受けた後・・・


いざ、氷河に立つ!


氷河を歩く!

そして、ついに氷河の中へ!!!


青ーーーー!!!


青いよーー!!!

「うわぁぁぁ・・・ン」と思わず乙女のような声で感激してしまう。


さらに100%天然氷河水飲むと・・・う、美味い!!!
持参した水筒に入れて、持って帰って氷河水でコーヒー飲みました。
別世界旅行してきたような・・・なんともフワフワした気分と程よい疲れと
ポカポカした陽気に、ついつい昼寝。今日は休息日。

 パイネ国立公園(その4)

7日目。
いよいよ後半戦。朝9:35出発。


11㎞先のキャンプ地「pehoe」を目指して朝9:35出発したが
13時すぎに「pehoe」へ到着してしまい、まだまだ体力的にも余裕があるし
「pehoe」のキャンプ場の雰囲気もイマイチだし、有料だし・・・
次の無料キャンプ場「itariano」まで7,6㎞歩くことにした。

さすがに19㎞弱のトレッキングはしんどいが、
確実に"歩ける体”になってきている。
バックパックの背負い方、歩くリズムのとり方などを体で学んでいるのだろう。

16:20「itariano」に到着。


今夜はとっておきの魚の缶詰とパスタで栄養をつける。


8日目。
テントに荷物を置いて、軽装で展望台へ。
展望台からはパイネの絶景が360度のパノラマで見渡せるという。
グレイ氷河に続くパイネ国立公園の見所のひとつだ。

ピクニック気分で出掛けたが片道2時間30分の山道。かなりしんどい。
「ちょっとそこまで行ってきます」って感じで出発したのに
予想以上の険しい山道だったから余計に疲れてしまった。
正直、途中から「展望台の絶景」なんてどうでもよくなってくる(笑)。


ようやく頂上へ辿り着いたんだけど
《こんなキツイおもいしたわりには・・・》という感じ。

それより、もう少し手前の谷間にある河原からの景色の方が感動的だった。
白っぽい石がゴロゴロしてて、妙に静かで、ガランと広くて、
パイネの山々が魚眼レンズみたいに周囲をぐるーっと囲んで
こちらを見下ろしているようで・・・



奥さん曰く「天国の途中みたい」・・・だった。

下山してると、ゴゴゴゴゴォオ!という地響き。
氷河が崩落する音だった。ほんの一部分が崩れただけなのにすごい地鳴りだ。

15:30 テントに帰ってきた。
体力に余裕があればこのまま次の目的地へ行く予定だったが
予想外に疲れてしまい、今夜は「italiano」にもう一泊することにした。

 パイネ国立公園(その5)

9日目。
さて、いよいよ終盤だ。
8:50「italiano」を出発。


5.5㎞先のキャンプ地「los cuernos」まで休憩を入れず一気に歩く。
しかし、ここから猛烈な登り坂。
道を間違えたんじゃないかと思うほど、果てしない登りが続く。


とりあえず見晴らしのいい場所で昼食。



やっと登りが終わると、今度は穏やかな道がつづく。
「ガンダーラ」「モンキーマジック」「ビューティフルネーム」etc..
何故かゴダイゴの曲をメドレーで歌いながら歩く。

途中、急流の川を石伝いに渡っていると、奥さんが川にドボン!落ちた。
その数分後、俺の頭に木の枝がグサッ!刺さった。
奥さんは靴びしょ濡れ。俺は頭血まみれ。
血は出てるけど傷はたいしたことなさそうなんで
オクムラ家に代々伝わる秘伝の薬「コーフル」を塗って応急処置。
パイネの大自然の中「コーフル」を頭に塗ってるのが妙に可笑しくて
「パイネでコーフル」と思わず口に出して笑ってしまった。


これがコーフルだ!!!!
幼い頃から怪我したら「コーフル塗っときなさい!」
ニキビができたら「コーフル塗っときなさい!」
旅行に出かける時は「コーフル持って行きなさい!」
と言われ続けてきたのだ!!!

それはさておき・・・
しばらくすると今日の目的地「las torres」までの道と
その先の「Chileno」までショートカットする道の分岐点を発見。
ちょっと悩んだが、早くこのトレッキングを終わらせたい気持ちが勝り、
ショートカットで「Chileno」へ。
16:30 「Chileno」に到着。すでにこの時点で20㎞以上歩いている。
こうなったら、行くとこまで行きましょう!ってことで
最終キャンプ地「Torres」までの残り5㎞を勢いのみで歩く。
18:15 「Torres」に到着。
なんとこの日は28㎞も歩き続けた。
初日は10㎞の距離を歩くだけでヘトヘトになってたのに
人間の体ってのは不思議なもんだ。

あとはパイネ国立公園の最大の名所・トーレスの展望台から
山が真っ赤に染まる朝焼けを見たら帰るだけだ!!!

あと2、3泊する予定だったのに、まさかこんな早く帰れるなんて!!
頑張った甲斐があった。
頭の中はもはやトーレスの朝焼けよりも
宿に帰って「チキンの丸焼き」を食べることでいっぱいだ!!



今夜はもう節約しなくてよくなった食材をいっぱい食べた。
とっておきのポテトチップス(チーズ味)もあっという間に食べ尽くした。



 パイネ国立公園(その6/最終日)

10日目。
AM4:00 トーレスの朝焼けを見るためには
1時間ほど真っ暗な山道を登らなければいけない。
しかし、肝心の夜道を照らすライトを買い忘れた。
手持ちのライトは10ワットもないようなショボさ。
仕方なくキャンプ用のガスストーブで照らしながら、
同じく朝焼けを見に行く人にシレっとついて行くことにした。

真っ暗闇の中、かなり険しい山道を登っていく。
巨石がゴロゴロしている展望台についた頃には
空がうっすら明るくなってきていた。



いよいよクライマックスだ。
頭の中ではうまそうなチキンの丸焼きがジュージュー煙を上げている。
早く食べたいなぁ。。。と考えているうちに空が赤く染まってきた。



パイネを代表する鋭利に研ぎ澄まされた3つの山「トーレス」が
異様な凄みを帯びながら赤く染まりだす。

・・・と、突然ポツポツ雨が降り出してきた。
霧も濃くなってきて、雨も本格的に降り出した。


もっと真っ赤に染まるはずだった「トーレス」はあきらめて、
雨に打たれながら下山することにした。

まぁ、それもよかろう。
朝焼けよりもここまで辿り着いた満足感で胸がいっぱいだ。

下山してる途中で雨が止んだ。ふと「トーレス」を振り返ると
なんと!綺麗な虹が半円を描いて見事に浮かんでいるではないか!


神様も粋なことをしなさる。

8:00にテントへ戻ってきた。
本当はこれから少し歩いて、あと1泊して帰るはずだったけど
もしかしたら、今日の14:30のバスに間に合うかもしれない!
と、急いでテントを片付け先を急いだ。

バス乗り場「hostelia torres」まで11㎞。
今の我々なら、行けない距離ではない。


達成感と満足感と帰れる喜びで、一度も休憩することなく歩き続け
3時間後にはバス乗り場に到着していた。



あぁ~、終わったぁぁぁ。


お世話になったピッケル代わりの棒をそっとお供え。

バスを待つ間、売店をのぞくとドアに「捜索願い」の貼り紙が・・・
パイネをトレッキング中に何らかの事故で行方不明になった日本人だった。
しかもわずか10日ほど前の出来事。。
確かに危ないなぁと思う場所はいくつもあった。
切り立った崖なのに手すりもないし、道案内はいい加減だし
こんな広大な大自然の中、遭難したって探しようもない。
過剰なほど安全対策に敏感な日本では考えられない野放し状態だ。
これからパイネへトレッキングする方はくれぐれも気を付けて下さい。


バスに揺られながらパイネでの10日間に別れを告げ、爆睡。

プエルトナタレスに帰ってきてまず向かった先は・・・
もちろんスーパーマーケット!!!
食材やらワインやらお菓子やらを衝動買いして、
再び『HOSPEDAJE ESTRELLITA』へ。
宿主のルーベンが握手で出迎えてくれた。


そして・・・念願のチキンの丸焼き!!!
中にはトマトとズッキーニがぎっしり詰まっております。
爆発する食欲!!!隣で見ていたルーベンも苦笑いするほど食べた。

とにかく終わった。

もう氷河もトレッキングも充分堪能した。
鏡を見ると加藤鷹みたいに真っ黒に日焼けしてて
ちょっと贅肉も削げ落ちてる気がした。

パイネでの10日間は大変だったけどすごくいい経験だったと思う。
有無を言わさぬ大自然を"ひたすら歩く”という単純明快な日々に
様々な感情が重なり、夫婦や家族や友人や自分、音楽や生活のことなど
大切なものがより鮮明に愛しく感じられた。

でも、もうトレッキングはこりごりです(笑)。

プロフィール

オクムラユウスケ

Author:オクムラユウスケ

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